⚑ パロアルト, カリフォルニア
数学を実用化することに情熱を燃やすサラ。サラは、どのようにしてエンジニアリングの世界に足を踏み入れたのか。また、太平洋を越えてトヨタの全車両の自動運転技術の安全性を強化するために、どのようにエンジニアと協力しているのかを教えてくれました。女性の能力を最大限に発揮させるために、つながりやコミュニティーの場が果たす重要な役割についても自らの考えを語ってくれました。
Q: 自動運転技術および先進運転支援システム(AD/ADAS)のコントロールチームでは、具体的にどんな仕事をしているのですか?
一言では言い表すのが難しいのですが、私たちは自律走行車の制御アルゴリズムを開発するチーム。基本的に、「人間がいなくてもクルマが自律的に制御できるようにするための計算をし、コードを書く」ということをしています。それはまた、自動車が安全性を保つためにドライバーをサポートするコードでもあるのです。「この運転状況ではどのようなステアリング角度をクルマに送るべきか」、「この傾斜で左折する必要がある場合、クルマはどの程度のアクセルを踏むべきか」、「前のクルマに追突しないよう、クルマはいつブレーキを踏むべきか」といった問題に答える、高度な数学による問題解決です。 そしてそれは、私たちがトヨタやトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)と協力して構築し、拡張している製品、「チームメイト」や「ガーディアン」のような形となって表れています。
Q: そして、どのようにしてこの仕事の分野に入りましたか?
数学が好きだったからです!数学の博士号を持つ母のおかげでもあるし、今まで出会った先生方のおかげでもあります。 修士でも博士でも、大学院で制御理論を勉強している人ならわかると思うのですが、制御理論の数学は本当にややこしいんですよね。でも、かっこいいし、おもしろい。私はもともと理論数学の学生だったので、その分野にも興味がありました。微分方程式、線形代数、マトリクス...数学の問題は私にとっておもしろいパズルのようなものだから、どれもとても興味深かったんです。でも、学べば学ぶほど、「この問題はいったい世の中にどう関係するんだろう?」と自問するようになったのです。
そこで大学では機械工学に進みました。数学を自分を取り巻く世界に応用する最も明白な方法だったからです、そして、その応用数学がもたらす潜在的な影響力の大きさに惹かれて、自律走行技術や運転支援技術を専攻したのだと思います。一台の車だけではなく、全ての車に影響することだから。具体的に言えば全てのトヨタ車のことなんだけど、それ自体がものすごく大きなことだと思います。
Q: お母さんが数学の博士号を持っているとおっしゃいましたが、あなたがこのキャリアを追求する上で、お母さんはどのような影響を与えましたか?
数学に興味を持ち続け、次のレベルに進むことができたのは、母のおかげです。母の父親は物理学の教授だったので、私の家族には物理学、工学、数学の歴史がたくさんあります。正直に言うと、数学がとても抽象的で、あまり面白く感じないこともありました。でも私の母は、私が興味を持ち続けられるようサポートしてくれたし、数学を新しい角度や別の角度から探求するよう励まし続けてくれました。そのおかげもあって応用数学、機械工学の道を見つけて進むことができたのだと思います。
母をお手本にできたことは、とても恵まれていたと思います。家族に直接そういうつながりがある人はあまりいないと思うので、先生や自分よりキャリアが上の人たちに連絡を取って、つながりを持つのはいいアイデアだと思います。そうすれば、その分野での自分の道がどうなっているかを知ることができますし、それが自分に向いているかどうかを判断することもできますので。
Q: ウーブン・バイ・トヨタでのこれまでの経験で、最も印象に残っている出来事とその理由を教えてください。
アドバンスト・ドライブ・システムの快適性を向上させるために、自動車にコードを書き込んだプロジェクトですね。私のような博士課程出身の人間にとって、研究開発から製品化までのギャップを埋めるのはとても難しいことなので、これは私にとってとてもワクワクする瞬間でした。
Q:ウーブン・バイ・トヨタのような異文化の職場環境を実現する最大の要因は何だと思いますか?
コミュニケーションが一番なのですが、正確で、正直で、回数を重ねることが重要です。特に問題やミスがある場合、コミュニケーションの遅れや曖昧さは最大の敵となります。誰かが何かを隠したり、複数の異なる方法で解釈する余地があると、その時点で共同作業に不信感が生じ始めます。誤解や認識のズレは、遅延やさらなる問題を招くのです。常にストレートに、事実に忠実に。そして、どんなに小さなことでも、常に最新の情報を伝えることがとても大切です。
Q: 今年の国際女性デーのテーマは「女性に投資して、前進を加速しよう」です。企業が投資することのできる、女性が直面する大きな課題は何だと思いますか?
女性が直面する最大の「課題」は、必ずしもジェンダーに特化した点ではなく、より一般的な居場所やインクルージョンに関するものだと思います。自分が部外者であり、ふさわしい環境にいないと感じれば、自分の仕事を見てもらうことは難しい。自分の仕事を見てもらい、つながり、認められ、成長することも難しくなります。なので企業ができることと言えば、自分と同じような関心を持つ人たちと仲間意識が持てるような場所を作ることに投資することだと思います。
本当になんでもいいんです。正式な従業員リソース・グループだけでなく、趣味の集まりのようなものもあります。些細なことに聞こえるかもしれませんが、犬が好きな人が自分の犬について話す場は、同僚とつながり、その話題で関係を築くきっかけを作るのに役立ちます。「植物が好き?私も植物が好きです!WovenではABCをやっているんですか?XYZについて聞いてもいい?」など。 これが私のアドバイスです。人々が自分の居場所だと感じ、自分の役割で成功する道を見つけることができるように、コミュニティや人間関係を築ける場所を作ることに投資してほしいです。
Q: お時間をいただき、ありがとうございます。今後、楽しみにしていることはありますか?
まだまだたくさんの開発のチャンスがあることです。技術的な観点から言えば、現在のAD/ADASシステムには、安全性とリスク評価の観点から取り組み、手軽に取り組める課題がたくさんあります。車内の運転者だけでなく、歩行者や他の道路利用者のためにも。例えば、ガーディアンの次の改良版。私のトヨタ車のように、現実の世界で見るのは本当に興味深いものになると思います。